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究極の洗練

F512 M、改良されたTESTAROSSA

究極の洗練
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F512 M
F333 SP
412 T1
1995
究極の洗練
1994究極の洗練
00:00
1994継続的な革新

究極の洗練

F512 M、改良されたTESTAROSSA

後世の名作のコピーはオリジナルを超えられるでしょうか? その答えはおそらく「できる」です。その好例となるのが、レオナルド・ダ・ヴィンチが描いた有名な「岩窟の聖母」です。最初のバージョンは1483~1486年頃に描いたとされており、現在はルーブル美術館に所蔵されています。さらに、後に描いたバージョンは1506~1508年頃の作とされ、ロンドンのナショナル・ギャラリーに所蔵されています。

究極の洗練

この2つの作品の違いは普通の人の目にはあまりよく分からなくても、緻密に分析すればその違いは明確です。これと同じく、1980年代に誕生した「Testarossa」のリメークモデルも、さまざまな点で改良が加えられています。このF512 Mは、Testarossaシリーズを最も発展させたバージョンであるだけでなく、1970年代にF1を席巻した312 Tの180°V型12気筒ミッドシップエンジンを搭載するフェラーリの最後を飾ったモデルという、非常に価値の高いバージョンでもあります。フェラーリのエンジニアがこのF512 Mで特に力を入れたのは、搭載するエンジンの熱力特性と運動特性の大幅な見直しと最適化でした。これを行ったのはもちろん出力を向上させるためで、結果的に最高出力が440 hpに達しました。このパワー増大のおかげで先代モデルよりも加速性能が向上し、さまざまなパーツも軽量化されたことで、より優れたパワーウエイトレシオが実現されています。F512の後に続く “M” の文字は “Modified”、つまり改良型を意味したもので、マーケティング上の戦略だけでなく、このモデルのあらゆるパーツが根本的に見直されていることを示しています。その例として挙げられるのが、ノーズ、テールの両方で大幅に見直されたラインや、形状の変更によるエアロダイナミクスの改善です。しかし、ピニンファリーナの設計者とマラネッロのエンジニアが特に力を傾けたのは、このモデルのフロント部分でした。

新たなノーズラインはF355に、スタイルは456 GT 2 + 2に非常に近いものとなっています。オリジナルのTestarossa(512 TR)のフロント部分から最も大きく変更されたのはヘッドランプで、リトラクタブルヘッドランプを廃止し、ガラスカバー付きの固定式に変更されました。さらに、フロントウインドウ寄りのボンネットの両サイドには、改良されたエアコンにフレッシュエアを導く小型のNACAダクトが設けられました。テールを横断する水平のブラックペイントグリルも小型化され、その両端には新しい丸型のツインテールランプが取り付けられており、これはフェラーリの歴史を称えるオマージュとなっています。 F512 Mは、512 TRの後継モデルとして1994年秋のパリモーターショーで発表されましたが、スクーデリアのオフィシャルドライバーだったジャン・アレジを起用し、海外の多数の自動車誌向けに秘密裏に公開されていました。このモデルの名称には、数字の前に “F”(Ferrari の頭文字)が冠されているほか、512 TRと同じく、”512” は総排気量5リッターと12気筒を表しています。

この数字に続く改良型であることを示す “M” は1970年代序盤のレース仕様のスポーツカープロトタイプ「512 S」を称える意味もあり、その後継モデルとして512 Mが誕生しました。

1994年の傑作