1992年、ピニンファリーナは、跳ね馬の偉大なクラシックモデルに関する新たな解釈を提示しました。すなわち、伝統的な12気筒エンジンをフロントに搭載していて、卓越した性能を発揮することのできるGTモデルをあらためて定義したのです。その結果、トリノを拠点とするこのボディショップは、シンプルでエレガントなフォルム、そして比類のない気品と魅力を備えたフェラーリを見事に完成させ、ラインナップのさらなる充実を実現させました。2+2クーペの「コンセプト」を採用したV12モデルは、3年間にわたってニューモデルの登場がありませんでしたが、1992年にその頂点を極める456 GTが誕生しました。
456 GTは、1992年9月、ベルギーの重要なディーラーが創業40周年を迎えた際の記念式典で公開されると、翌月にはパリで正式デビューを飾ります。キャビンに向かって上昇するソフトで丸みを帯びたラインはピニンファリーナが手掛けたもので、忘れ難い365 GTB/4 “Daytona”を現代風にアレンジしたものとして、すぐさま一般の人々や批評家達が口を揃えて称賛しました。かつての365 GTB/4 “Daytona”も、長いボンネットとリトラクタブルヘッドライトを特徴としていたモデルです。テールとコックピットは”Daytona”を思わせるデザインに仕上げられていて、ボディのフォルムは、現代的でありながらもフェラーリの歴史を彷彿とさせるクラシックな要素を含んでいました。また、テールパネルの下には微妙な空力効果をもたらす速度感応式の電動スポイラーが備わっていて、走行速度に応じて車両のダウンフォースを変化させられるようになっていました。 他の全てのモデルと同様、456 GTも最初から世界市場を視野に入れて設計されましたが、アメリカ市場向けには特別な仕様も用意されています。ただし、2+2のコンセプトを採用した先代のGTモデルがオートマチックトランスミッション仕様車であったのに対し、456 GTはマニュアルトランスミッション仕様車のみが用意されました。ギアボックスをディファレンシャルやファイナルドライブと一体化させた、いわゆるトランスアクスル方式を採用している点も”Daytona”と同じです。 新開発された12気筒エンジンは、有名な12気筒「ボクサー」エンジンが20年前に登場して以来初めてのもので、総排気量が5,474 cc、最高出力は442 cv/6,200 rpmにおよびました。
車内には、スタイリッシュなレザー仕上げのインテリアを標準装備。電動フロントシートは、シートを自動で前方へ移動させることができたため、大人2人が快適に座ることのできたリヤシートに対し、乗り降りを容易にしていました。このほか、トランクスペースを有効に利用できるようにするため、スーツケースのセットも標準装備されました。