最初のFerrari 488 GT Modificataのリミテッド・エディションがオーナーに納車されましたが、そのステアリングを握るとどのような体験が待ち受けているのでしょうか…?
撰文 - Chris Rees
フェラーリの488 GT3およびGTEは空前の成功を収めたGTレーサー2モデルとなっています。それは、世界耐久選手権およびル・マンでいくつものタイトルを獲得したことでも明らかです。これらのモデルが持つ究極のパフォーマンスは、レースのテクニカル・レギュレーションで制限されていましたが、そのような制約から解き放たれたら、これらのレーサーはどれほどの高みに達するのでしょうか?
それが、ここしばらくの間フェラーリ・コンペティツィオーニGTの世界でクライアント達が興味津々で尋ねていた質問です。そして、488 GT Modificataがその決定的な回答です。耐久レースのレギュレーションの足枷が外された488 GT Modificataは、達成可能なことをすべて達成した頂点のモデルで、 選び抜かれたわずかな人々に最大のパフォーマンスとドライビング・プレジャーを提供するサーキット専用のGTです。
フェラーリ・コンペティツィオーニGTのトップを務めるアレッサンドラ・トデスチーニは、 「488 GT Modificataのコンセプトは並外れてピュアです。それは、488 GT3と488 GTEの最高の部分を組み合わせた上に、馬力、冷却およびエアロダイナミクスなどの分野がさらに進化した極限のハイパフォーマンスカーです」と説明します。
また、488 GT Modificataは、 クラブ・コンペティツィオーニGT専用に開発された初のフェラーリであることも、特筆に値します。現在まで、F40 Competizioneから現行の488 GTEおよびGT3まで、純粋なフェラーリのレースカーのみに参戦資格が与えられていました。これに対し、新型488 GT Modificataは、フェラーリのレース部門によって開発・生産されたものの、当初はレースへの参戦は意図されていませんでした。
しかし、ステアリング・ホイールを握ったとき、ドライバーが期待できるのは何でしょうか?「ドライバーにとっての最も強烈な体験は、間違いなく驚異の加速です。それは、明らかな進歩です」と、GTレーシング・カー・デザイン開発部門のトップであるフェルディナンド・カンニッツォが説明します。「また、違いは耳で確かめることもできます。特に高回転域では、 よりフェラーリらしい方法で、あなたはサウンドに「ハグ」されます」。
このような体験の中心は、驚くほどパワフルなエンジンです。約700 cvの最高出力は、488 GT3およびGTEから100 cvアップしています。卓越したV8ツインターボ・エンジンには新型の制御システムおよび専用マッピングが採用されている他、ターボチャージャーの回転数がアップし、エンジン内部も改良されています。
488 GT Modificataの開発には、常にレースでの体験がフィードバックされ、ドイツのニュルブルクリンクの「長い」北コースで徹底的なテストによってコンセプトが証明されました。「私達は、488 GT Modificataと488 GT3 Evo 2020を北コースで並行して開発しました」と、カンニッツォが語ります。「488 GTEのサスペンションを移植し、ブレーキは488 GT3 Evo 2020のABSシステムのセットアップを流用しています」。
488 GTE同様、488 GT Modificataのボディは、ほとんどがカーボン・ファイバーでできています。その独自のエアロダイナミック形状によって、230 km/hで1,000 kg以上のダウンフォースを発生するほか、出力アップによって最高速度も大幅に高まっています。
では、その結果、どうなったのでしょうか?「ラップタイムで言えば、数十分の1秒の単位ではなく、数秒のアドバンテージが得られています」と、カンニッツォが豪語します。「たとえば、モンツァやスパなどの高速サーキットなら、Modificataのタイムは488 GT3より5秒短縮されます。
488 GT Modificataのもうひとつの大きな魅力は、純粋なレーシングカーとは違って、2つのシートを備えていることです。たとえば、フェラーリのドライビング・スペシャリストに助手席に乗ってもらいレッスンを受けたり、すべての車載テレメトリーのメリットを活かすのを手伝ってもらったりできます。または、家族や友人に同乗してもらい、フェラーリ・クラブ・コンペティツィオーニGTモデルでサーキットを走る独自の刺激的な体験を愉しんでもらうこともできます。
ドライバー中心というフェラーリのミッションに従って、複数のパーソナリゼーションのオプションが用意されています。たとえば、異なるギア比を選択したり、形状およびサイズが異なる専用シートをオーダーしたり、もちろん、車体の塗装も希望通りに仕上げることもできます。
1台目の車両がすでに納車され、クラブ・コンペティツィオーニのイベント・カレンダーにも次々と大きな興奮が書き加えられています。「私達は、私達のクライアントの望みを叶えるために新型488 GT Modificataを創りました」と、アレッサンドラ・トデスチーニが締め括っています。「当社の歴史の1つを作り出したのは、実は彼らなのです」。