2022年夏、マラネッロ - フェラーリのF1ドライバー、シャルル・ルクレールは、パスタ、特にスパゲティに目がありません。事実、数年前に彼はカルボナーラ・スタイルの料理を習いました。
昨シーズン、チームの人気企画「C2チャレンジ」において、彼は有名な料理を作りました。しかし、彼が料理したのはスパゲティではなく短めのパスタです。結果、料理の対戦ではチームメイトのカルロス・サインツに敗れてしまいました。
フェラーリ F1 のエース、シャルル・ルクレールが完全にリビルドされた 312 F1 でフィオラーノ・トラックを疾走する様子をご覧ください
数週間前、イタリアのフィオラーノにおいて、ルクレールは再びスパゲティと向き合うことになりました。しかし、今回はスパゲティを料理したわけではありません。サーキットで走らせたのです。彼が走らせたのは、「スパゲティ」のニックネームで知られるF1マシン、1967年型の312 F1です。
「スパゲティ」というニックネームは、このマシンのエキゾースト・システムが複雑な形状をしていて、イタリアの最も有名な料理であるスパゲティを連想させたことに起因します。事実、バンク角60°、48バルブ、最高出力410 cvのV型エンジンは、パスタのようなパイプがエンジンの上を覆っていました。そしてそのパイプは白く塗装されていたため、絡み合ったスパゲティにそっくりだったのです。
ちなみに、フェラーリが所有するフィオラーノのサーキットは、正式にオープンしたのが今から50年前の1972年であるため、312 F1よりも数年だけ若いことになります。
312 F1 は数レースしか勝てませんでしたが、F1マシンとして初めてリヤ・ウイングを装着した点は確実に注目に値します
312 F1は、1966年から1969年までレースに参戦。その間、ルドヴィコ・スカルフィオッティ、ロレンツォ・バンディーニ、アンドレア・デ・アダミッチ、クリス・エイモン、ジャッキー・イクス、デレック・ベル、ジョン・サーティースといった名ドライバーがステアリングを握ったものの、優勝回数はわずか3回にとどまりました。
しかし、シャルルが走らせたそのマシンは、マラネッロというブランドのみならず、F1全体の進化にも重要な役割を果たしました。なぜなら、リヤ・ウイングを装着した初めてのF1マシンであったからです。
このマシンの現在のオーナーは、Tipo 242Cエンジンを含め、車両全体を本来の仕様に戻したいと考え、フェラーリのクラシケ部門にリビルドを依頼しました。マシンが本来の仕様に戻れば、オーナーはそのマシンでヒストリック・レースに参戦することができるのです。リビルトの作業が完了すると、クラシケ部門はシャルルにシェイク・ダウン(ならし運転)を依頼しました。
ルクレールは 312 F1 を運転する時間が大好きで、今の F1マシンでレースをするのはほとんど「別のスポーツのようだ」と語ります
1951年の375 F1、1975年の312 T、そして1979年の312 T4など、フェラーリのヒストリック・マシンを走らせてきたシャルルは、それらについてのエキスパートになりつつあります。
彼がこれらのマシンを走らせることに飽きてしまうといったことは、決してありません。シャルル自身も「こうした機会に恵まれたことを大変うれしく思っています」と話したうえで、次のように加えています。「今のF1-75からこの312 F1に乗り換えるのは、まったく別のスポーツを行うようなものです。とは言え、どのフェラーリを走らせた場合も、つねに同様の興奮を味わうことができます。しかし、この「スパゲティ」については、実にあらゆる点を楽しむことができました。」