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19 9月Magazine, Cars

スーパーカーのための特別なタイヤ

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スーパーカーのための特別なタイヤ

GTO、F40、F50、Enzoなどのクラシックスーパーカーのオーナーが安心して運転し続けることができるように、フェラーリとピレリは共同で、新しい構造技術とコンパウンドを使用して新しいオリジナルタイヤを開発しました

文:ジョアン・マーシャル / 動画:ケビン・ドーソン

ピレリの有名な1994年のブランドキャンペーンのスローガンは、「Power is nothing without control(コントロールを伴わないパワーは、意味を成さない)」というものでした。5つの単語で構成されるこの言葉は、高性能車には高性能タイヤを装着する必要があるというメッセージがうまくまとめられています。マラネッロのフラッグシップスーパーカーについて話すときに、こうした要件はさらに重要さを増します。当時のスーパーカーは、技術の進歩やクラスをリードするシャシーダイナミクスの観点から、最大限の成果を上げていました。こうしたことから、フェラーリとピレリは共同で、このフェラーリブランドの最も伝説的なスーパーカー GTOF40F50Enzo の4車種の交換用タイヤを開発しました。




上:F40、F50、Enzo、そしてGTOのタイヤ開発テストがフェラーリのフィオラーノ・サーキットで行われました




「フェラーリでは、スペアパーツや純正部品の需要に日々対応しています」こう説明するのは、グローバルアフターセールスおよびフェラーリ・クラシケの責任者であるアンドレア・モデナです。「安全面からのタイヤの重要性は見過ごされがちです。特にリミテッドシリーズ車については、正確な仕様と正しいアスペクト比のタイヤを見つけるのは容易ではありません。最新のアフターマーケットのタイヤの一部はすでご利用いただけるようになっていますが、私たちはさらに一歩進んで、従来のサプライヤーであるピレリに新しいタイヤを2つ開発するように依頼しました。そして、開発を進める一方、ピレリに対しては、同社の既存のアフターマーケットタイヤを2本テストし、それらの性能が私たちの厳しい基準を満たしていることを確認するように依頼しました」


フェラーリの最初のスーパーカーはGTOであり、車両の加速、ブレーキ、路面保持性能にマッチした超ロープロファイルタイヤ(フロント:225/50 R16、リヤ:255/50または265/50 R16のいずれか)を最初に採用した車の一つでした。ピレリがGTOのために用意した新しいタイヤはP7 Cinturatoです。これは、元々は1974年の世界ラリー選手権用に設計されたものであり、その後1976年に量産スポーツカー用に発売されました。これは、ハンドリング性を向上させるためにロープロファイルを採用した初のモダンタイヤでした。ピレリは、最新の素材や構造技術を融合させ、幅広のリヤタイヤサイズ(265/50 R16)、そしてクラシックなルックスとトレッドデザインを備えたGTO用の新しいP7を開発しました。




上:フェラーリのチーフテストドライバー、ラファエレ・デ・シモーネを待つ F40




1987年のF40用タイヤは、すでにアフターマーケット製品として販売されていたCollezioneシリーズのP Zeroの新しいバージョンでした。現在は、245/40 R17(フロント)と335/35 R17(リヤ)のオリジナルサイズで最新バージョンが導入されており、改良されるとともに、タイヤウォールにはオリジナルのタイヤレターがあしらわれています。同様に、1995年にはF50用に、ピレリのCollezioneシリーズの新しいP Zero Corsa Systemタイヤが開発されました。サイズは、245/35 R18(フロント)と335/30 R18(リヤ)です。


P Zero Corsa Systemタイヤは、2002年のEnzo Ferrariの専用開発プロジェクトのベースとしても選ばれています。新しいタイヤでは、オリジナルのサイズとアスペクト比を忠実に維持しながら、最先端の素材、コンパウンド、そしてテクノロジーを駆使して、昨今のレベルのグリップ、性能、安全性を実現しています。Enzo Ferrari用には、オリジナルサイズの245/35 R19(フロント)と345/35 R19(リヤ)が用意されており、ハイドロプレーニングを防止するための異方性と非対称のトレッドパターンが特徴です。




左から:Enzo に新しいタイヤを装着中。新しいタイヤを装着したF50が走行準備完了。ラファエレ・デ・シモーネ(右)がエンジニアのガブリエレ・プリトーニとテストドライバーのファブリツィオ・トスキと運転の印象をシェアしています




ピレリは、著名なフェラーリコレクターから惜しみなく貸し出された車両を使用し、フェラーリのエンジニアやチーフテストドライバーのラファエレ・デ・シモーネとともに、新しいタイヤ専用の開発テストをイタリアのフィオラーノで行いました。「目的は、路面保持力やフィーリングという点で、各タイヤがオリジナルのパフォーマンスを維持していることを確認することでした」シモーネはこのように説明します。「最新のコンパウンド、タイヤウォールの剛性、構造技術があれば、ドライコンディションでの過渡操作時に大きなグリップ力を発揮するタイヤを作るのは簡単です。しかし、それでは当初の車両設計どおりに運転するのに必要なバランスやプログレッシブなハンドリング特性は得られません」




上:ピレリは、GTO 向けに、より幅広なリアタイヤサイズ、当時の外観とトレッドデザインに最新の素材や構造技術を融合させた新しいP7 Cinturatoを開発しました




定期的な試運転では、車両に極端なターボラグが発生し、その後に大きなパワーオーバーステアが続く現象が常に見られていました。しかし、実際には、GTOとF40のどちらも限度付近では想像以上にコントロールしやすく、滑り出しは穏やかです。これこそまさに、マラネッロが、このようなパワーに対処するタイヤに求めている特性なのであり、おびえることのない爽快なハンドリングを実現するのです。


フェラーリは、これらのスーパーカーの交換用タイヤを正式に承認することで、以前のリミテッドシリーズモデルのオーナーが引き続き安心して車を楽しむことができるようにする取り組みを、再び示しました。




カバー画像:左から、フィオラーノ・サーキットを走る Enzo(2002)、F50(1995)、F40(1987)。新開発のピレリタイヤを装着しています

このストーリーは、オフィシャル・フェラーリ・マガジン第64号に掲載されています


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