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21 9月 2023Magazine, Cars

Ferrari Enzoとの出合い

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Ferrari Enzoとの出合い

マラネッロは、2002年のパリモーターショーにおいて、これまで達成したエンジニアリングのなかでも最も大胆な偉業といえるモデルを発表します。あるジャーナリストがそのときのことを回想します

文:ガビン・グリーン - 動画:Rowan Jacobs

それほど昔のことではないように思えますが21年前、フェラーリはその名高いスーパーカーの歴史の中で最大の技術的躍進となるモデルを発表しました。より正確に言えば新型Ferrari Enzoは、数多くの技術的躍進を披露します(1つだけではありません)。


私は9月下旬の開幕プレスデーに、2002年パリ モーターショーを取材するジャーナリストとして、フェラーリのスペシャリストと個別のインタビューを予定していました。その内容は、先進の材料(最も顕著なものは最先端のカーボンファイバーとハニカム構造の使用)、エアロダイナミクス(それまでに販売されていたロードカーの中で最も先進的)、パワートレイン(フェラーリの最新V12と新しい超高速パドルシフトのデビュー)、そして革新的な新しいカーボンセラミックディスクブレーキなど多岐にわたるものでした。私がモーターショーで1台の新車にこれほど多くの時間を費やしたことはないと思います。




Enzo はフェラーリの中で最も素晴らしく、技術的に躍進したフェラーリのひとつでした




この車がモーターショーのフェラーリのブースで発表されたとき、これ以上の「驚き」を感じさせた車はほとんどありませんでした。それはこの車の美しさや優美さのためではありません。私の目には、これよりも美しいフェラーリはたくさんありました(私の意見に反対の人もいますが)。 むしろ車の外観に目を見張るものがあったからです。それはテクノロジーと機能性の見事な例で、詩的なスタイリングには欠けていたかもしれませんが、臆することなくパフォーマンスを優先したカリスマ的なデザインがそれを補って余りあるものでした。感覚だけでなく数値に、 さらに官能性だけでなく科学に、 そしてスタイルよりもエンジニアリングに関係していました。公道仕様のフェラーリがこれほど機能に影響を受けたことはおそらくそれまで(あるいはそれ以来)なかったでしょう。


技術的な最高傑作として設計されたこの車は、技術の達人であるフェラーリが公道仕様リミテッドエディションスーパーカーで実証可能な最先端の高速自動車テクノロジーを紹介するものでした(わずか399台が計画され、400台目は慈善活動のためにバチカンに寄付されました)。 当然のことながらテクノロジーの大部分が、フェラーリの多くのロードイノベーションを育む場所であるF1に由来しました。


その他の注目すべき点には車名が含まれます。フェラーリ車の中で唯一、会社の創設者の名前にちなんで名付けられました。




機能性へのこだわりとF1のインスピレーションがキャビンにはっきりと表れていました




風洞実験に基づいて設計されたEnzoは、まるでF1カーのように見えます。尖っていて角があり、気流を制御するための目立つ吸気口とベンチュリを備えたこのモデルは、ミハエル・シューマッハとスクーデリアが世界選手権で圧倒的な勝利を収めていた当時のF1フェラーリの影響を明らかに受けています。 


ロードカーとしては記録的なレベルのダウンフォースを実現し、ブレーキングと高速安定性にメリットをもたらしました。その高度なアクティブエアロダイナミクス(F1ではルール違反)には、調整可能なアンダーボディフラップと自動的に作動する控え目なリヤスポイラーが含まれます。大型リヤディフューザーを含むエアロマジックの多くがF1カーと同様に車両の下で行われ、前例のないレベルの「地面効果」を発揮します。


私は幸運なことに、発表直後にEnzoを運転することができました。その高度なダウンフォースとエアロダイナミクスは高速走行時に顕著で、これまでのスーパーカーでは実現できなかった路面との接触を直に感じられる車でした。288 GTO、F40、F50などの素晴らしいリミテッドエディションスーパーカーの後継車としてふさわしいだけでなく、技術的にさらに高度なものでした。




尖ったスタイルや大きなベンチュリと吸気口は F1 から借用され、優れた空力性能を実現するのに役立ちました




これは構造によく見て取ることができます。288 GTO、F40、およびF50は、先進的な複合材料の使用の先駆けとなりました。F40はカーボンとケブラーのボディを備え、F50はF1スタイルのカーボンファイバーモノコックを採用します。しかしEnzoは、軽量性、剛性、強度においてこれを新たなレベルに引き上げました(パリモーターショーにおいて、フェラーリのエンジニアが、Enzoの最先端のF1標準カーボンファイバーについて私に説明したとき、彼が自信満々であったことを今でも覚えています)。 乾燥重量はわずか1,255kgで、これほどの強力な(660hp)V12エンジン搭載スーパーカーとしては驚くほど軽量でした。


新しいV12は世界で最も強力な自然吸気エンジンでした。このF140ユニットは現在、すべてのV12フェラーリに搭載されており、フェラーリの最もアイコニックな最新パワートレインであり続けています。新しい6速セミオートマチックトランスミッションは、わずか150ミリ秒という超高速のシフト時間を実現します。これは21年前としては驚くべき速さです。


制動力は驚異的でした。カーボンセラミックブレーキを使用した最初のロードフェラーリで、当時のスクーデリアのF1マシンではおなじみの光景でしたが、ロードでは先駆的でした。




デザインは機能性を重視しました。 しかし、 Enzo は依然としてフェラーリの最も壮観な外観を持つ車のひとつでした




Enzoは、すべてのリミテッドエディションのフラッグシップフェラーリスーパーカーと同様に高度な新技術のたたき台でした。大半の技術がほどなくして他のフェラーリにも採用されます。さらに強力なV12パワー、強化された空力、より高速のギアシフト、優れたブレーキを備え、サーキットに焦点を当てた2005年リミテッドエディション(30台を生産)のFXXプロトタイプも誕生します。


そして同様に、そこから得られた知識がその後のすべてのフェラーリに技術革新を提供することになります。




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