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18 8月 2022Magazine, Passion

オーストラリア発のラブストーリー

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オーストラリア発のラブストーリー

長年のフェラーリ・オーナー4名の驚くべきコレクションを紹介する最終回。今回のオーナーは、41年前に308 GTBをきっかけとしてコレクションを始めたグラハム・カークです

文:ケビン・M・バックリー

写真:Lou D'Angelo

グラハム・カークは、率直な意見を述べることが好きな真面目なオージー(オーストラリア人)です。1960年代にメルボルンの小学生だった彼が、寝室の壁にフェラーリのロードカーのポスターを貼っていた理由について尋ねられると、彼は次のように答えます。「フェラーリは最高のスポーツカーだと言われてましたからね。最高のものが欲しかったんです」と。


そして24歳のとき、彼はその一途な姿勢を保ったまま、『節約、駆け引き、そしてたくさん働くことによって』少年時代の夢を実現させたのです。彼が手に入れたのは308 GTB。3年落ちの中古で、走行距離は5,000 km。今から41年ほど前のことです。




30年以上にわたって収集してきた多くのスパイダーの最新モデル、シルバーカラーの”デイリー・ドライブ”のハンドルを握るグラハム




その後、30代半ばまでの10年間、彼は自動車部品のビジネスを発展させることに専念していました。家を買うことも考えていたようです。「その後、再びフェラーリを買ったら、それ以来、ずっと買い続けているんです」と、彼は話します。彼が購入した『2台目』の車は355 GTSでした。「今もそれに乗っていますし、私はもともとV8が好きですから」と、彼は淡々と語ります。


現在、カークのコレクションは、F8 Spider、575M Maranello、488 Pista Spider、Portofino、599 GTB、812 Superfastなど、各種のグランド・ツアラーからサーキット走行にフォーカスした特別なモデルにいたるまで、フェラーリのV8およびV12モデルを幅広く網羅しています。そのほか812 Competizione AとSF90 Spiderについても現在注文中です。グラハム・カークは、めったに車を手放しません。「私は車を売りません。買うことはしますが」と、自ら力強く語ります。彼のコレクションは、その多くが入念に整備された状態で低走行距離のまま保管されています。


現在、彼の愛車はF8 Spiderです。彼は自身の車について「あまり目立たないようにシルバーにしたんです」と話したうえで、 「面白いことに、会社の駐車場はアメリカ車ばかりです」と付け加えています。父親と同様、つねに自動車ビジネスに携わってきた彼は、現在、ここオーストラリアで自動車部品会社営み、マーケット・リーダーとして『アメリカン・マッスルカー』用のV8エンジンを供給しています。




自動車部品のビジネスを築いた後、グラハムは「その後、再びフェラーリを買ったら、それ以来、ずっと買い続けているんです」と、話します。




彼はあえて自身の『壮大なこだわり』と語っていますが、そこにはオープン・トップに対する彼の思い込みがあるのでしょうか?「そうなんです」と、 彼は嬉しそうに告白します。「私のコレクションは、6割がコンバーチブルです。ハードトップを持っているのは、コンバーチブルの設定がないモデルの場合だけです」。


カークがコンバーチブルにこだわるのは、彼の美学などではありません。彼自身も「いいえ、まったくそんじゃありません」と述べています。彼がコンバーチブルにこだわるのは、感覚的な要素を重視しているからなのです。「車のサウンドがすごくよく聞こえるんです。スパイダーを運転しているときにルーフを上げている状態で渋滞などにはまっても、エンジン音などが聞こえるように後ろのウインドウを下げておいたりします」。


フェラーリのオープン・トップについて魅力的な点を説明しようとすると、彼はさらに感情をあらわにします。「それは......」と言いかけては止まったり、成人後の大部分の人生においてフェラーリが重要な存在であり続けてきたことを真剣に説明しようとしたりするのです。「オープン・エアの 開放感が魅力なんだと思います。それは、周りが囲まれていないという感覚です。周囲を囲まれている感じがハードトップの嫌なところです」と、彼は話します。




カークの 愛車:後方に575M Maranello 、手前にF8 Spider




彼の488 Pista SpiderとPortofinoは、どちらもカスタマイズが施してあるモデルです。後者はオーストラリアのレースの歴史からインスピレーションを得ていて、センターからずれた位置に施されたストライプが特徴です。また、インテリアにはレザーではなく、クヴァドラ社のキャンバス生地を採用。彼はこの生地について「見る角度によって色が変わる上質な生地です」と説明しています。


しかし、彼が自身の全コレクション中で最も愛着を感じているのは、488 Pista Spiderです。「たぶん、全体をデザインするのに力を注いだからでしょう」と、カークは話します。彼はイタリアでテーラーメイドのスペシャリストを訪ねると、アルカンターラによるカスタム・インテリアを選び、ユニークなエクステリア・カラーであるカーク・オレンジをアクセントとしてそこへ配することにしました。「濃いオレンジのような色です」と、彼は説明します。「注文から納車まで、おそらく3年はかかったと思います」。その詳細な「スペック・プレート」を示しながら、「自分は本当にこの車を誇りに感じています。現存するPistaの中では最も高いスペックを持つ1台です」と、彼は語ります。来年は812 Competizioneのカスタマイズを考えているそうです。


彼は愛車を自ら手洗いするほど手作業にこだわっています。「手洗いしますよ!日曜の朝は、犬を連れてふらっと出かけてみたりします。晴れた日には車を外で洗ったりするのが何よりの楽しみです」。


50年目を迎えた今も、グラハム・カークの強い執着心はこれまでと変わっていません。




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