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05 3月Magazine, Cars

途絶えることのないレガシー – Ferrari F40

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途絶えることのないレガシー – Ferrari F40

開発期間わずか1年で誕生した伝説的モデルF40は、エンジニアリングの最高傑作で、最新のF1テクノロジーを搭載し、究極のドライビングを実現しました

文:ジェーソン・バーロウ / 動画:Rowan Jacobs

エンツォ・フェラーリは、ひっそりとではなく、大きな音を鳴り響かせてこの世を去りました。19世紀に生まれ、自動車の勃興に極めて重要な役割を果たし、充実した人生を送った彼ほどの人物にとって、自らが開発にゴーサインを出した最後の1台がフェラーリ最高の1台に数えられるのは当然のことかもしれません。けれども、この自動車メーカーの強大な基準に照らしても、F40は画期的な存在でした。その暴力的なキャラクターを含め、フェラーリのすべてを集約したようなマシンで、爆発的な速さとパワフルさを誇るマシンでした。


自他ともに認める“人々の扇動者”であったエンツォは、才能の発掘者としても定評がありました。エンツォは1979年にエンジニアのニコラ・マテラッツィを雇い入れましたが、彼は当時、新興技術だったターボ過給に関するイタリアにおける第一人者でした。マテラッツィはスクーデリア・フェラーリの1980年代前半のF1マシン開発に関わっただけでなく、GTOを開発したチームの監督も務めました。GTOはもともとグループBレーサーとして設計されたマシンでしたが、FIAが安全上の懸念から同シリーズを中止したため、ロードカーとして市販されることになりました。その複雑な出自にもかかわらず、GTOの売れ行きは好調で、エンツォ・フェラーリは後継モデルの製作を熱望しました。F40という名前は、フェラーリの40年の歴史に敬意を表して命名されました。フェラーリでは当初400台の生産を予定していましたが、最終的には生産台数は1,300台を超えました。




力強い Ferrari F40 の走りをご覧ください…




開発期間はわずか1年で、エンツォ・フェラーリは開発チームに異例の自由裁量を与えました。これにより彼らは、類まれなフォーカスと目的を与えられ、ターボ過給技術のサーキットから公道への移行を具現化したマシンを磨き上げることができました。技術的な特異性は、言うまでもなく、あらゆる傑作車に共通する特徴のひとつです。


F40はコンテンポラリーなF1技術を採用し、鋼管スペースフレームシャシーにケブラーパネルを接着した車体構造となっています。ドア、ボンネット、トランクリッドはすべてカーボンファイバー製です。エンジンは2,936ccのV8で、これを縦置きに搭載し、等長エキゾーストマニホールドと2基のターボを組み合わせ、最高出力478CVを発生します。エンジンブロック、シリンダーヘッド、カムカバー、インテークマニホールドはマラネッロの鋳造工場においてシルミン合金で鋳造され、クランクシャフトはスチールの無垢材から削り出されました。




F40 のボディは、可能な限りエアロダイナミクスを高めるために広範な風洞テストを経ました




乾燥重量わずか1,250kgのF40は、ゼロ発進から4.1秒で100km/hに到達します。さらに注目すべきは、フェラーリが発表した324km/hという、1987年当時としては驚異的な最高速度です。実際、F40はその重要なしきい値を突破した最初の市販車でした。


これにより、その名声は確固たるものとなりました。しかし、それはまた、ピニンファリーナのピエトロ・カマルデッラが手掛けたボディデザインの暴力的なまでの美しさによるものでもありました。ピニンファリーナのチーフ・デザイナーを務めたレオナルド・フィオラバンティは、「私たちは、この仕事に全力投球しました」と当時を振り返っています。「フェラーリ史上最もパワフルなロードカーを開発するにあたってその車にふさわしい係数を実現するため、風洞で広範な研究を行いながら、エアロダイナミクスの最適化に努めました。さらに彼は次のように付け加えています。「車両のスタイリングと性能が調和しています。この車を有名にした要素は、オーバーハングをきわめて小さくした低いボンネットやNACAエア・ベント、そして同僚のアルド・ブロヴァローネが直角に配置したリヤ・スポイラーです」。




画像 1: F40 のツインターボチャージャー V8 を開発するエンジニア。 画像2:縦置きエンジン。 画像 3: インテリアはベーシックですが目的を持ったものです。 画像 4 と 5: 駐車中および走行中の F40 – 自然なスタイル




F40はまた、そのステアリングを握る幸運に恵まれた人たちから大きな尊敬を集める車でもあります。1987年にスクーデリア・フェラーリでF1マシンを走らせていたゲルハルト・ベルガーは、皮肉まじりに次のように語っています。「F40はとても運転しやすい……レーシングカーの経験があればね」。 それは控えめな表現かもしれません。この車が今では非常に貴重な歴史的マシンであることは忘れてください。ツインターボで、スロットルレスポンスがカミソリのように鋭く、トラクションコントロールやブレーキアシストの類を一切備えていないF40は、非常に爽快でありながら神経をすり減らすようなドライビングエクスペリエンスを味わうことができます。コクピットに座るだけでも、威圧感を覚えます。ドアパネルは剥き出しで、ダッシュボードは簡素そのもの、フロアのカーペットもありません。カーボンファイバー製のシートは耐火素材のノーメックスで覆われています。この車はまさしくレーシングカーです。




F40は4.1秒で100km/hに達し、その後最高速度324km/hを達成することができ、その重要な数字を超えた最初の市販車でした




スターターボタンを押すとV8の咆哮が響き渡ります。アイドリング時はレーシングカーのような大音量で、走り出すとそのサウンドは幻想的な領域にまで到達します。現在、フェラーリを含む自動車業界は、電気パワートレインに魂を加えるための方法を模索していますが、特別な車にはその車でしか味わえない特別な魅力が存在します。F40もそのひとつで、内燃機関の醍醐味に酔いしれることができます。暴力的な勢いで加速し、ツインターボを唸らせ、波に乗るようにドライバーを手招きします。デジタル化した世界において、F40は過剰なまでにアナログな存在として今なお異彩を放っています。




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