サーキットのスーパースター

07 2月 2020

Chris Rees

サーキットを走るFXX-K Evoの姿は魅力的ですが、実際にドライブしてみると、どんな感じなのでしょうか。ある幸運なオーナーから話しを聞くことができました。


フェラーリのファンにとって、XXプログラムのサーキット・マシンが猛スピードで走る光景とその音は、この上なく魅力的なものであるに違いありません。そして、XXプログラムの車両の中で頂点に君臨しているモデルであると言えるのが、FXX-K Evoです。LaFerrariをベースとするこのサーキット専用車は、フェラーリの手掛けた車両の中で、恐らくF1マシンに次ぐ究極の車であると言えます。「エボ」の名前が示すように、すでに圧倒的なパワーを獲得しているFXX-Kに改良を施したモデルであることが分かります。

見事な走りを披露するマシンですが、実際にそれを走らせてみると、どのような印象を受けるのでしょうか。米国テキサス州在住のジョン・テイラーにその質問を投げかけてみました。ジョンが所有するFXX-Kは、約2年前にエボ仕様へとアップグレードされた3台のうちの1台でした。彼は自分のマシンを駆ることがとても好きなようです。なぜなら、サーキットを走るたびにフロントガラスにステッカーを貼られるのですが、ジョンのマシンのフロントガラスには、今やそのステッカーが1列半も並んでいるのです。

ジョンは、「私は、エボに改良される前と後の仕様でこのマシンを走らせているので、両方の状態を比較することができます」と話してくれました。彼はさらに、「エボの方が明らかに大きなダウンフォースを得られるので、コーナーではブレーキングのタイミングを遅らせて、コーナリング・スピードを高めることが可能です。最高速で走らせている時に、より高い安定性を感じることもできます」と付け加えました。

ジョンが指摘するように、エボの主な改良点であるダウンフォースは、従来比で23%増大しています。フロント・エンドとリヤ・エンドのデザインを大きく変更し、アンダーボディにボルテックス・ジェネレーターを設けたことにより、大きな違いを生み出すことができたのです。

では、このマシンの操縦はどれほど難しいのでしょうか。ジョンは、「実のところ、非常に運転しやすい車ですよ。私にとっては、それが最も印象的な点です。458 Challengeで数年間レースに参戦したことがある私にとって、458 Challengeは運転しやすいマシンでしたが、FXX-K Evoはさらにその上を行きます。この車に関しては、長時間のトレーニングが必要ありませんでした。とはいえ、納車時には工場でとても有益なオリエンテーションを受けることができました」と話します。

彼はまた、元F1ドライバーであって、現在はフェラーリのテスト・ドライバーを務めるマルク・ジェネから指導を受けています。二人の付き合いは、長年に渡ります。「ジェネの指導を受ける時は、毎回彼と一緒に数周走ります。皆さんにもその驚異的な走りを体験して貰いたいものです。私は、彼と一緒にスパ・フランコルシャンでウェットとドライの両方を体験しましたが、見事な走りでしたよ。それらの思い出は、私の記憶にずっと残るでしょう」とジョンは話します。

6.3リットルのV12エンジンと回生システムのKERSを組み合わせたことで全体の出力が1050 cvにおよぶFXX-K Evoは、極めて速いスピードを誇るマシンです。どれだけ速いのか、ジョンに尋ねてみました。すると、 「KERSとV12が組み合わさっているので、とんでもなく速い車ですよ。大抵のサーキットのストレートでは、並外れた最高速を出せます」と返ってきました。

彼はさらに、 「ハイブリッド・システムがとても素晴らしいです。エボには、「Long Run」モードで走っているときにKERSを連動させることのできるボタンが装備されているのですが、 それをオンにすると、パワーが増大していくのを実感できますよ」と続けます。

ジョンのマシンに施された黒と黄色の魅力的なカラーリングは、フェラーリのデザイン部門を指揮するフラビオ・マンツォーニが手掛けました。ジョンが、彼を名指して配色のデザインを依頼したという経緯があります。ジョンがかつて黄色のLeFerrariを購入していること、そして彼が黒色も好きであることを知ったマンツォーニは、この美しいカラーリングを思い付いたのです。