パーフェクトなボディを目指して
文:リチャード・ブレムナー
カロッツェリア・スカリエッティは、最先端のロボット工学と人間の手仕事を見事に融合させた工場
スカリエッティの工場で37年間も働いてきた確かな腕を持つ鈑金職人、ドメニコ・コリアーノは、私たちなら気づきもしない難点でも見つけてしまいます。それが、どんなに些細なものであろうと、何らかの欠陥を見つけた時には、どう対処すべきかを知り尽くしています。
一方、コリアーノからほんの2、3メートルしか離れていないところでは、複数のロボットが稼働して、488の接着式ボディパネルをフレームに固定するセルフピアッシングリベットを打ち込んでいます。
V8とV12のラインのボディアッセンブリーの工程は、コアシャシーユニットが届いたところから始まり、V8モデルのシャシーを、あとは塗装を待つばかりのボディに仕上げるには約10時間、V12モデルの場合はそのおよそ2倍の時間がかかります。
シャシーの構造体の組み立てには、ロボットと手作業による溶接の両方を用いますが、ここで重要な役割を担っているのはパーセプトロン社製のレーザー計測ロボットです。公差を厳密に守るべき部分は、Ferrrai488 GTBの場合で301カ所あり、そのすべてはレーザーで正確に計測されています。精度を確保するため、作られたボディはそのすべてがレーザーで計測されます。
ホワイトボディショップの責任者、クラウディオ・ガンバレッリは語っています。彼はフェラーリに入社する若者たちが、スクオラ・ディ・メスティエリ(技能訓練校)でどのような教育を受け、生産の各段階における技術を学ぶかについて説明してくれました。フェラーリを際立たせているのは、車そのものよりも、むしろ情熱と専門知識を持った従業員たちです。
何世代も受け継がれてきた伝統と技術が、最終的な製品を真にユニークなものにしているのです。
セリエ・スペチアーレのエリアでは、それが特に顕著です。LaFerrariの組み立てと仕上げには、50時間にも及ぶ高度な作業が必要です。カーボンファイバー製のモノコックタブに外装パネルを被せていく時、その一部については、目に見えるカーボン繊維の織り目を完璧に合わせなければなりません。スカリエッティでは、LaFerrariのアルミニウム製フロントモジュールとリアモジュールも製造しており、5つのワークステーションで、それぞれ480分にわたって細心の注意を注ぎながら、1日1台のペースでそのボディを作り上げます。
すぐ隣にある巨大なガラス張りの部屋では、厚い鋼板でできた定盤の上にF12tdfが乗せられています。これはスカリエッティの新しい計測センターで、1台の車につき1200ものデータ・ポイントを計測しています。マルチェロ・バルデッリの説明によると、「1日に4台を計測し、1台の計測には2時間かかります。この寸法データはアーカイブに保存されていて、過去に遡って調べることができます」とのこと。
鈑金職人のドメニコが、ボディパネルのすべてを手作業で叩き出していた時代と比べると、まるで別世界です。今では、職人のスキルの最良の部分が、最新のテクノロジーによって得られる安定した精度と組み合わされているのです。それがすべて、エンツォの親しい友人の工場で実現されているのを知れば、誰もがうれしく思うことでしょう。