文: Richard Aucock
フィナーレを飾った有名な1台は、スカリエッティの手掛けた美しいFerrari 500 TRC
フェラーリは、V8およびV12エンジンが有名です。しかし、1950年代、フェラーリは高性能な4気筒パワーユニットを数多く生み出していました。フェラーリの4気筒モデルとして最もよく知られている1台が、「レッドヘッド」の元祖でもある500 TR 「Testa Rossa」です。赤く塗られたシリンダー・ヘッドによってフェラーリの伝説を築いた500 TRは、その実績からも賞賛されるべき存在となっています。
1956年に登場した500 TRは多大な成功を収めたレーシング・カーであり、 このマシンを手にしたプライベート・チームは幾多のレースでクラス優勝を成し遂げました。同車が搭載する2.0リッターのV4エンジンはパワフルで、スカリエッティ製のボディは曲線を魅力とする美しい仕上がりでした。
1957年にレギュレーションが変わった際、レーシング・カーはドアのほかに横幅いっぱいのフロント・ウインドウを装備することが求められています。また、コックピットは幅が最小限に抑えられているうえ、車両検査の際にはフードを装着しなければなりませんでした。これは競技規則の中のFIA 「Cセクション」として知られているもので、フェラーリは再びスカリエッティの手を借りて500 TRCの開発に踏み切ったのです。
低さ、流麗さ、そして曲線美、これらを進化させた500 TRCは、きわめて美しいモデルに作り上げられました。フェラーリが生産したのはわずか19台で、今日の専門家たちはこの500 TRCについて、歴代モデルの中で最も魅力的な1台であると評しています。プライベート・チームの手に渡ったこのマシンは、2.0リッターのスポーツカー・クラスにおいて、チームに幾度かの勝利をもたらしています。1957年のセブリング12時間とル・マン24時間での勝利もその中に含まれます。
この500 TRCは、フェラーリ最後の4気筒モデルでもあります。世界選手権で一定の成功を収めたものの、パワーの追求はその後も続きました。そうした中、フェラーリのチーフ・エンジニアを務めたヴィットリオ・ヤーノは、さらなる出力アップを実現すべく、フェラーリのレーシング・カー開発に着手したのです。フェラーリ史上最も有名なモデルに含まれる、V12エンジン搭載の250 Testa Rossaは、TRのブランドを継承しつつ、世界のモータースポーツ・シーンを席巻しました。
先日、ザ・オフィシャル・フェラーリ・マガジン(TOFM)は、最後に生産された500 TRCと対面する機会に恵まれました。少なくとも、これまでに工場で正式に生産された車両の中では、これが最後の4気筒モデルです。
フェラーリが作成したビデオをご覧になり、スカリエッティの手掛けた、有名で美しいFerrari 500 TRCの魅力をご堪能ください。