フィオラーノで、記憶に残るヴィルヌーヴの312 T4をシャルル・ルクレールがドライブ
伝説の勝利を収めたシングルシーター。
野心と決意を持った新世代のドライバー。
舞台は、2022年に50周年を迎える由緒あるサーキット。
舞台となるのは、フィオラーノ・サーキットです。ここは、1972年以来、すべてのフェラーリの性能試験場となり、また高騰するコストを削減するためにF1レギュレーションによって廃止されるまで、長年にわたりスクーデリア・フェラーリが無数のテストを実施してきた場所です。
シャルル・ルクレールがマラネッロのフィオラーノ・サーキットで312 T4をドライブするのをご覧ください
ドライバーは、シャルル・ルクレール。F1でゼッケン16番のフェラーリを駆る異才で、2022年シーズンには最初の3戦で2勝を挙げるという驚異的なスタートを切ったスターです。そしてマシンは、1979年の312 T4。エンツォ・フェラーリの言葉によると「醜いが高効率」で、ジョディー・シェクターにタイトルをもたらし、ジル・ヴィルヌーヴを伝説のドライバーに仕立て上げたマシンです。
今年の復活祭(4月17日)の直後、フィオラーノでルクレールが312 T4を数周を走らせました。目的は、今から40年前の5月8日、ゾルダー・サーキットでベルギーGPの予選中に命を落としたカナダ人チャンピオン、ジル・ヴィルヌーヴを追悼することでした。
312 T4について語り合うシャルル・ルクレールとルネ・アルヌーがヴィルヌーヴ
この特別なイベントに出席したのは、マシンを所有するジャコバッツィ家の人々、ヴィルヌーヴの友人でライバルでもあったルネ・アルヌー(1983年以後のスクーデリアでヴィルヌーヴの後継者)、そして歴史に名を残すメカニックである、ウンベルト・“ベニー”・ベナッシ、ガブリエレ・パリアリーニ、ピエトロ・コラディーニ、アンセルモ・メナブエなどでした。
ルクレールは、ヴィルヌーヴと多くの共通点を持っています。フランス語のなまりはあっても、イタリア語に堪能で、不動のチャンピオンであるキミ・ライコネンの代役としてフェラーリにやってきたときは半ば無名の選手でしたが、競技では決断力を見せて観客を熱狂させ、レースのぎりぎりの場面では妥協を許しませんでした。
ガレージでのルクレールと312 T4
フィオラーノに到着したルクレールは、312 T4を見て感嘆の声を上げました。「すばらしい!乗ってもいいですか?」 「どうぞ、どうぞ」。ルクレールを取り囲んでいるのは、コース上でシングルシーターの管理を担当するフェラーリ・コルセ・クリエンティのメカニックたちです。このほか、同部門のテストドライバーでグランツーリスモの伝説ともなっているアンドレア・ベルトリーニや、アルヌーの姿もありました。また、ヴィルヌーヴのメカニックだった人々も、邪魔にならないように、しかしこの異才ルクレールに近づきたいと思いながら、控えめに並んでいました。
F1の撮影クルーも来ていて、5月8日当日、マイアミGPが始まる前に公開されるビデオ撮影の準備をしています。ベルトリーニがルクレールにシングルシーターの扱い方についてアドバイスします。「ギアをしっかり入れて、タイヤにも注意するんだ。すごく硬いタイヤだから、グリップが限られているからね。」 ルクレールは耳を傾け、自分が生まれる18年も前につくられた車に搭載されている、数少ない操作系統を調べます。
フィオラーノ・サーキット上の312 T4
いよいよサーキットを走るときが来ました。312 T4が始動し、ルクレールが1速に入れたまま、少し躊躇します。エンジンが停止しますが、すぐにメカニックたちが再始動します。スタート可能になりました。かつて幾度となくその威力を発揮したサーキットで、12気筒の咆哮が誇らしく響きわたります。1周目はスリップしないように注意しながらの走りでしたが、その後、ルクレールは自信をつけ、パワースライドさせて自分自身も楽しみ始め、ピットの人々、とりわけヴィルヌーヴのメカニックたちも手に汗を握って見守ります。「昔のヴィルヌーヴを見るかのようです」と、ベナッシが感慨深げに語ります。
予定の数周は、あっという間にすぎてしまいました。ルクレールは、もうこの体験を終えなければならないことを、残念に思っているようです。「できれば、もっと走りたいですね。このシングルシーターをドライブするのは、すばらしいことです。グランプリの全行程を走りきるのは大変かもしれませんがね。」 そして、ヴィルヌーヴについて語ります。「私は、ヴィルヌーヴの勇気、無謀さ、不屈の精神を知っています。ヴィルヌーヴは6勝しかしていませんが、彼以上に跳ね馬の神話に貢献した人はいないでしょう。彼をしのんで、このシングルシーターをドライブできたことは、光栄なことでした。私としては、フェラーリのためにレースに出て、ファンを興奮させ続けたいと思っています。」 頼むぜ、ルクレール。