羨望の的となる鑑定書は、通常、比較的古いモデルに対して発行されるものです。しかし、クラシケ部門による細心の注意を払った修復サービスは20年クラスのまだ「若いモデル」も対象とし、その寿命や価値を高めることができます
クラシックなフェラーリをイメージしたときにまず思い浮かぶのは、250 GTO、365 GTB4「Daytona」、Dino 246 GTといった名車でしょう。このような歴史的なモデルは自動車業界でも特別な地位にあります。
250 GTOのようなマラネッロの「至宝」の重要性と価値は誰もが知るところですが、このブランドの遺産を守るために2006年に設立されたフェラーリ・クラシケ部門ではすべてのフェラーリを同じ方針、手法で大切な宝物として扱い、メンテナンス、修復、技術支援、鑑定書の発行サービスを提供します。
それは、最近製造されたモデルに対しても同じです。現代のフェラーリ・モデルが、コレクターがたとえば1980年代のTestarossa「monospecchio」のような比較的新しいモデルを徐々に受け入れていくダイナミックなプロセスを通して将来的にクラシック・モデルとなる可能性は否定できません。
実際、フェラーリ・クラシケの厳格で献身的かつ細心の注意を払ったサービスを受けるのに車の製造年は関係ありません。ただし、羨望の的である鑑定書を発行するには20年以上前に製造されたモデルである必要があります。クラシケ部門では、最近マラネッロで大きな修復作業を行った美しい550 Barchetta Pininfarinaのようなモダン・クラシックも広く受け入れています。
鍵となるのはオリジナリティです。車両を最高の状態に保つだけでなく、工場出荷時のままの仕様を正確に維持することも重要です。フェラーリ・クラシケの認証サービスは、車両が独自の認証基準を満たし、本来の状態であることを保証するものです。それがなぜそんなに重要なのでしょう?開発時に、それぞれのモデルが決まった方法で機能するよう特定の設計に従って製造されているためです。したがって、何かを変えるということはもはや同じ車ではなくなるということです。
車は、時間が経つにつれて元の工場で製造されたのではない部品を取り付けられたり改造されたりしてオリジナルの状態でなくなることがあるものです。フェラーリ・クラシケの最大の役割のひとつは、車が製造時のオリジナルとまったく同じ状態であることを保証することです。それは文化財保護の問題なのです。
「普通」の車は寿命の限られた製品として設計されているかもしれませんが、フェラーリはまったく違います。フェラーリの顧客は、将来的に複数のオーナーの手に渡る可能性のある車のいわば「管理者」です。フェラーリ・クラシケの使命は、車をできる限り長く乗ることができて将来の世代にも楽しめるようにすることです。さらに、本来の状態を維持することができれば車の価値は高いまま保たれます。
この美しい550 Barchetta Pininfarinaはフェラーリ・クラシケによって丁寧なオーバーホールが行われたばかりで、モダン・クラシック・フェラーリの見本のような車です。2000年に発売された特別モデルで448台の限定生産でした。
シンガポール向けの右ハンドル車で2001年7月に納入されました。意外にも、走行距離計わずか165マイルでフェラーリ・クラシケに到着しました。したがって、ほとんど乗っていない「若い」クラシック・モデルに必要なオーバーホールの格好の例でもあります。驚くべきことに、ほとんどの場合、乗る機会の少ない車の方が定期的に運転する車より問題が多いことは事実です。
このケースでは、ミラーやフロント・ガラスに加えて布製ルーフを交換する必要があり、ホイール・リムもオーバーホールしました。レーシング・シートを備えたブラックのインテリアの状態は良好でしたが、キャビン内に施された当時のソフトタッチ塗装は時間が経つうちに「べたつく」傾向があるため、フェラーリ・クラシケではこれを塗り直し、すべてのボタンの動作を確認しました。
機械系統ではエンジンを完全に整備し、すべてのベルトおよび油脂類、ウインドウォッシャー液、バッテリー液を交換しました。サスペンションの点検、ショック・アブソーバーのオーバーホール、タイヤおよびワイパーの交換、燃料タンクの清掃も行いました。電気系統では、バッテリー、ABSコネクター、燃料ポンプの交換と同時に、警報システムをオーバーホールしました。
この550 Barchetta Pininfarinaには、20年以上前に製造された車両のみを対象とする「レッドブック」鑑定書が発行されました。これは、次の20年、そしてそれ以降もマラネッロのモダン・モデルを愛用していただく、末長く楽しんでいただくという使命を確実に果たすうえで大いに役立ちます。
このストーリーは、オフィシャル・フェラーリ・マガジン第59号に掲載されています