新しいボッシュのK-ジェトロニックを搭載してアメリカの排ガス基準をクリアした栄光のV12エンジンは、ライバルがうらやむ芳醇なパワーとトルクを発揮しました。また400 GTiは、カロッツェリア数社がその想像力を発揮するベースにもなり、ソフトトップ版も作られます。ミラノのパヴェージはさらに大きく踏み込みます。室内をレザーとウッドパネルで覆い、さらにセンタートンネルにモディファイを施すことで、400 GTiを優雅なカブリオレに仕立てたのです。
1979年11月、400GTi が400 GTの後継としてデビューしました。モデル名の最後に付く“i”はインジェクションを意味します。これまで片バンク当たり3基並んでいたサイドドラフト・ウェバーキャブレターに代わり、燃料噴射システムが採用になったのです。採用されたのはボッシュのK-ジェトロニックでした。同時に、ツインディストリビューターに代わり、ディノプレックス電子制御点火システムが採用になり、エンジンのリア右側にマウントされるディストリビューターはシングルになりました。燃料噴射を採用したのは世界中でますます厳しさを増しつつあった排ガス基準を満たすためでしたが、それでも公表パワーは310bhpに減少せざるをえませんでした。社内コードネームF 101 D 010と呼ばれたV12エンジンは、81mm x 78mmのボア・ストロークから4823ccの排気量を得ました。このエンジンと組み合わされたのはボーグ・ワーナーの3速ATで、駆動力はプロペラシャフトを介してリミテッドスリップデフに伝わり、さらに左右のハーフシャフトを介して独立サスペンションで吊られた後輪へと伝わりました。なお、後輪には自動車高調整装置が備わりました。
400 GTiは、テールに“i”のエンブレムが付く以外、エクステリア、インテリアともに見た目は先代モデルと同じでしたが、シャシーの社内コードネームはF 101 DL 110に改まっていました。1982年終盤、いくつかの変更が施されました。エンジンではカムプロファイルの形状が見直され、エグゾーストマニフォールドが新しくなり、これで約5 bhpのパワーアップを果たしました。一方、リアサスペンションに備わる自動車高調整装置はガス封入式へと変更になり、ホイールがメトリック表示に変わり、これまで以上にロープロファイルのタイアと組み合わされました。室内に目を転じると、内装のステッチパターン、ドアパネルのデザイン、センターコンソールのレイアウトが変わりました。外装では、ドアミラーがよりエレガントな形状に改まり、“Ferrari”と記されたエナメルの小さな盾が台座の上に据えられました。ラジエターグリルの幅が縮まった分、ドライビングライトがむき出しになり、併せてそのドライビングライトの形状が正方形から長方形に変わりました。ボンネット上の、ラジエターの熱気抜きルーバーがボディカラーと同色になり、高輝度フォグランプがリアバンパーに組み込まれました。
従来の400シリーズ同様、ピニンファリーナが内装まで仕上げたボディをフェラーリに納め、フェラーリがメカニカルコンポーネントを組み入れました。ハンドルは左右両方の仕様を選ぶことができ、パワーアシストが標準で備わりました。ただしこの時期の12気筒モデル同様、北米仕様は用意されませんでした。1985年までの生産期間中、シャシーナンバー26667から55421にいたる422台が製作されました。