308 GTBは1975年のパリ・サロンとロンドン・ショーでデビューしました。デザインはピニンファリーナで、スカリエッティが製作しています。エンジンは308 GT4のV8を引き継ぎましたが、潤滑方式はドライサンプに改まっています。これによりエンジンを低く搭載することが可能になり、循環するオイル量も増えたので冷却効率が上がることとなります。当初はグラスファイバーボディをまとい、希にみる美しいスタイルとクラスのトップをいく性能により、販売開始と同時に成功を収めています。
待望久しいディーノ246GTの後継車は1975年のパリ・サロンで初めて登場しました。ピニンファリーナのボディは明らかなウェッジシェイプを特徴としており、格子パターンのアルミ製ラジエターグリルは角形で、その上を半つや消しのブラックに塗装されたスリムなフロントバンパーが全幅にわたって走っています。このボディには、ディーノ246GTのデザインエレメントが随所に受け継がれています。ドアにはエアインテークのえぐりがあり、テールライトは丸形2連で、垂直のリアウィンドウは凹型に湾曲し、その左右をフィン状のサイドパネルが挟むという具合です。フォルムは本質的にディーノのアップデート版で、前身の特徴をふんだんに受け継ぎ、血筋の繋がりを強調していました。308GTBのスタイルはメディアからも顧客からも賞賛の的となりました。
ひと目見ただけではわかりませんが、308GTBはフロントリッドがアルミである以外、総グラスファイバー製ボディをまとっていたことは特筆すべきでしょう。グラスファイバーをボディの素材として用いた最初の生産型フェラーリであり、これまでのところ同社がこの素材を大量生産モデルに用いた唯一の例でもあります。308GTBの登場以来、今日にいたるまで、フェラーリはグラスファイバー製のパネルを多数のモデルに採用しており、特に前後スカートやノーズセクションに多用しています。
仕上がりの水準は高いものでしたが、北米仕様では1976年後半に、ヨーロッパ仕様では1977年中頃に、伝統のプレススチールとアルミに戻されています。グラスファイバー製ボディには、フロントウィンドウピラーとルーフパネルのつなぎ目があるので容易に見分けがつきます。また、北米仕様には重いバンパーアッセンブリーと角形のサイドマーカーライトが備わる点で識別することができます。
1977年には、大型のフロントスポイラーがオプションで用意されました。前方への突き出しが浅い標準型と同じく、グラスファイバー製でした。エンジンベイ背後にラゲッジコンパートメントが備わるのがディーノ・シリーズの共通点となります。308GTBでもエンジンカバーを開けると、ファスナー留めのコンパートメントが現れます。ちなみに、これまでのディーノではラゲッジコンパートメントのリッドは、エンジンリッドと分離していました。
主たる市場であるヨーロッパ仕様の308GTBに用いられた鋼管シャシーはティーポF 106 AB 100と呼ばれるもの。4輪にディスクブレーキを備え、ダブルウィッシュボーン、コイルサスペンション、油圧ダンパーによる独立サスペンションで、前後にアンチロールバーを備えます。すべてにフェラーリのロードカー用の奇数のシャシーナンバーが打刻され、ハンドルは左右どちらでも選ぶことができました。
1975年から80年までの生産期間中に2897台が製作され、シャシーナンバーは18677から始まり34349に至ります。
ミドに横置きされるアルミ製V8エンジンは基本的に308GT4に積まれたユニットと同じです。
バンク挟角は90°で、各バンクあたり2本のカムシャフトはチェーンが駆動しました。81mm x 71mmのボア・ストロークから2926ccの排気量を得ています。ヨーロッパ仕様の社内コードネームはティーポF 106 AB 000。
エンジンはオールシンクロメッシュ5速トランスミッションと組み合わされ、トランスミッションアッセンブリーはエンジンのサンプの下、後方に位置します。ツインチョークのウェバー40 DCNF キャブレター4基は、Vバンクのなかにマウントされます。
エンジンの細かいスペックは仕向地によって異なり、ヨーロッパ仕様ではドライサンプ式の潤滑方式を採用したのに対し、オーストラリア、日本、北米仕様は308GT4同様、ウェットサンプのままでした。公表出力はヨーロッパ仕様で255bhp、動力性能を低下させるエミッションコントロールデバイスを備える北米仕様では240bhpでした。
スポーツエグゾーストシステムや、ハイコンプレッションピストンとハイリフトカムのコンビがオプションで用意されました。
308GTBはパドヴァのミケロットの手によりラリーカーにコンバートされ好成績を収めています。プライベートエントリーでイタリア国内のラリーに幾多の勝利を収めただけでなく、ポッツイフェラーリフランスのエースドライバー、ジャン-クロード・アンドリューの活躍でトゥール・ド・フランスでは1981年と82年に2連勝し、81年のタルガ・フローリオで優勝したのをはじめに数々の優勝を勝ち取っています。