ターボによる過給という技術はF1 で確立されました。そしてサーキットで得たノウハウは、時を置かず生産車にフィードバックされます。こうして1982年のトリノ・ショーで登場したのが208 GTB ターボでした。
2リッターの V8エンジンは大幅なパワーアップを果たし、この排気量では通常考えられないほど優秀な加速力をもたらしました。排気量別の税制対策のために生まれたモデルのキャラクターが、本格的なハイパフォーマンスモデルへと一変したのです。取り外しのできるタルガトップを備えたGTSもカタログに載りました。
当初、208ターボのタルガルーフ版は造らない予定でしたが、顧客の要望が強く、1983年に208 GTSターボがカタログに登場しました。ベルリネッタの場合と同じく、外観上、ピニンファリーナデザインのボディに現れた違いはごく少ありません。深いフロントスポイラーの上、ラジエターグリルのすぐ下に、冷却スロットが5個水平に並びます。フロントリッドには梨地ブラックのルーバーが並び、ターボチャージングによる熱気に対処するため、ラジエターに大量の空気を送り込みます。
電動ドアミラーは標準装備でしました。ボディサイドの下側、リアホイールアーチの前にはNACA式のダクトが開いています。また、ルーフ後端部、リアクォーターパネルのあいだをウィングがわたり、その取りつけ部分はリアフェンダーに融合しています。テールには誇らしげに“Turbo”のエンブレムがつき、左右1組の2本出しテールパイプが顔を覗かせています。標準タイアはメトリックサイズのミシュランTRXでしたが、オプションで16インチリムに組み合わされるピレリP7タイアが注文できました。
インテリアでは3スポークステアリングホイールのデザインが変わり、中央のホーンボタン周辺が角形になり、レザーでカバーされる部分がリムからスポークにまで伸び、親指をかけられるようになりました。
センターコンソール前端部に計器パネルがつき、ターボブースト計と油温計が収まりました。オープンゲートの切られたギアレバーはセンターコンソールのドライバー寄りに位置します。
センターコンソールにはスイッチ、パーキングブレーキレバー、灰皿が備わりました。取り外し可能なルーフはシート背後にカバーをかけて仕舞うことができました。
208 GTSターボ用チューブラーシャシーの社内コードネームはティーポF 106 DS 100。サスペンションはウィッシュボーン、コイルスプリング、油圧ダンパーによる全輪独立、ディスクブレーキも全輪に備わり、前後にアンチロールバーがついていました。
ロードカー用の奇数のシャシーナンバーが打刻され、すべて左ハンドルです。1983年から1985年までの生産期間に、シャシーナンバー42863から59279にいたる250台が造られました。
横置きにミドマウントされるV8エンジンは基本的に208 GTB用ユニットと同じです。バンク角は90度、DOHCはベルト駆動で、66.8mm×71mmのボア・ストロークから1991ccの排気量を得ています。圧縮比は7:1。社内コードネームはティーポF 106 D 000です。
このエンジンと組み合わされるのがオールシンクロの5速トランスミッションで、エンジンサンプのリア下側に位置しました。排ガスで駆動するKKK製ターボチャージャーにはウェイストゲートが備わりました。燃料供給はボッシュのKジェトロニック、点火系はマレリの電子制御式MED 804Aを採用。公表出力は220bhp /7000rpmでした。